IFDP概要

今日は、僕が参加しているIFDP(International Faculty Development Programme)の概要を、ちょっとご説明しておきたいと思います。

このプログラムは「Ph.Dビジネススクールの教授にする」という看板を掲げた、大学生や社会人ではなくPh.Dクラスの「ファカルティ(講師)」向けのプログラムです。毎年世界中のビジネススクールの教授あるいは教授の卵が集まってきて、1ヶ月ビジネススクールで教えるためのトレーニングを受けます。IFDPはIESEが1992年から開始したプログラムで、今年で17回目を迎えます。これまでにこのコースを修了した教職関係者は、世界中でこれまで280人以上。今年のIFDPには18カ国、33人もの教授が世界中から集まりました。
プログラムの中身も多彩で、もちろん「ケース・メソッド教授法」「ケース・ライティング」の2つのスキルが中心ではあるのですが、それ以外にも「コース・デザイン」「ファカルティ・ディベロップメント(講師のキャリア開発)」「ビジネススクール経営」など、非常に幅広いスキルや考え方を取り扱います。IESEはもともと米ハーバード・ビジネススクール(HBS)との提携によって、欧州に初めて設立されたビジネススクールですので、ティーチングやその他のスキルも、HBSのものが忠実に再現されています。

なお、毎年プログラムは参加者の意向を汲み入れて少しずつ見直されているのですが、2008年のプログラムは以下のようなコースから成り立っています。

  • ケースメソッド教授法
  • ケースライティング
  • コースデザイン
  • ケースメソッド以外の教育メソッド
  • ファカルティ・ディベロップメント
  • コミュニケーションによる説得
  • オペレーション・マネジメント
  • グローバル・リーダーシップ
  • ビジネススクールの経営
  • MBAコースのデザイン
  • ケース・プレゼンテーション
  • 経営研究ワークショップ
  • 企業訪問

ちなみに、2008年のプログラムから、「ビジネススクールの経営」のコースが新たに加わりました。これだけのプログラムを作っておきながら、さらに毎年毎年見直しをかけて改善を積み重ねていくという姿勢が本当にすごいです。なお、4週間のプログラムの参加費用は4,000ユーロ(約64万円)。これ以外に、指定のホテルを利用する場合は1,700ユーロ(約27万円)が別途かかります。

IFDPが良いなあと思うところは、世界各国から集まったビジネススクールの教授たちと、世界最高のビジネススクールの1つであるIESEの教授たちとが、ガンガン議論をしてお互いの持っているものを出し合って切磋琢磨していること、その渦の中に飛び込んで「本物のケースメソッド」とその教育的価値について心ゆくまで議論できることです。

おそらく、ここで提供されている1つ1つのコースは、日本にいて受ける機会もあると思います。ですが、日本でケースメソッドのセミナーを受けても、そもそも受講者のほとんどがケースメソッドのやりかたを知らず、決して自分からは積極的に発言しないので、まともなケースメソッドになりません。したがって、結局は講師からの一方通行のレクチャーに終始してしまい、ケースメソッドの何が良いのか、どうすればケースメソッドで教育の価値を高められるのか、さっぱり分からないままセミナーが終わってしまったりします。

しかし、IFDPではとにかく誰もが討論に積極的に参加し、実践的なマネジメントの経験と専門領域の学問的知見の両方を出し合いながら意見を交わします。その結果、ケースメソッドの良さとその限界、ケースメソッドを活用したさまざまなアクティビティ、それが生かされるような大学運営に至るまで、あらゆる観点からの知恵がやり取りされていきます。

これだけのプログラムに1ヶ月4,000ユーロで参加できるというのは、本当にお得だなあと思います。日本からの参加は今年の私が初めてだそうですが、IFDPのプログラム・ディレクターであるハビエル・サントマ教授には、「参加者の多様性を確保するためにも、アジアからは日本の教授に継続的に参加してもらいたい」と言われています。もしIFDPに参加してみたいと考える方がおられましたら、juevesまでご連絡いただければ喜んでご相談に乗りたいと思います。