情報は世界を駆けめぐる


今日、朝食にカフェテリアに降りていくと、アフリカ人の男性教授が「日本ですごい殺人事件があったようだが、大丈夫か?」と聞いてきました。例の秋葉原の事件のことです。私もネットで昨夜、ちょうど事件が起きてから半日ぐらいしてから事件のことを知り、さまざまな記事をインターネットで読んでいました。「国内の事件としては異例で、世界中に速報された」と言われていましたが、実際に海外の人たちも相当関心を持ったようです。

朝食だというのにいきなりその話題ですか、どう切り返そうかなと頭の中で考えていると、横からハンガリーの女性教授が「アメリカなんか、あんな事件は日常茶飯事でしょう?」と笑いながらコメント。これまたご存じのようです。皆さん、本当に情報が早いですな。
僕としては「あんな事件は日本では滅多に起こらないですよ」と返すしかなかったわけですが、自分がスペインにいるのかどうかすら疑ってしまうぐらい、世界というのは狭いものだなと感じました。インターネットというのは本当にすごいですね。

ビジネススクールの世界も、例外ではありません。世界中のどこのビジネススクールの評価が高いかといったことは、英Financial Timesや米Business Week、米Wall Street Journalなどが公表する毎年の世界ビジネススクールランキングとは別に、世界中の学生の間で猛烈な勢いで飛び交っています。いわゆる「口コミ(Word of Mouth)」ですが、その力は恐ろしいほどです。

世界規模だけでなく、学生同士の情報のやり取りのスピードや品質は、ネットの進化のおかげでますます上がっています。IESEでは、教授の良し悪しの評価といったものは一切公開していません。もちろん、コースごとに学生へのアンケートは取っているのですが、その結果は学内で翌年の教授の人事などの参考にされるものであり、学生には公開されないものです。しかし、「学生同士で教授の評価サイトを作り、どの教授の授業が良かったといった情報はたちまち流通してしまうようだ」と、IESEの教授もこぼしていました。

マスメディアのビジネススクールの評価指標は、企業のリクルーター(人事担当者)からどれだけ評価されているかとか、卒業生がMBAを取得する前と後でどのくらい収入をアップさせたか、またどんな専門分野やキャリアを持つ教授、学生が集まっているかといったことで評価するようです。しかし、そもそもビジネススクールも教育というサービスの一種である以上、サービスに対して実際にお金を払う学生たちの満足度が購買決定の重要な要因になり得ます。これまではそうした主観を共有する仕組みがなかったわけですが、インターネットはそうした制約を急速に取り払いつつあるようにも見えます。

ビジネススクールの世界も他のタイプの教育と同様、インターネットの爆発的な普及に直面して、これから大きく変化していかざるを得ない気がします。