受講者によるケースセッション

受講者のケースセッション今週はだんだんと受講者自身が発表したり、セッションをやったりするところが増えてきました。今日(金曜日)は午前中に「ケースメソッド」のティーチングプランの発表、午後に「コースデザイン」で各グループが作ったコースの発表など、グループ発表のセッションがてんこ盛り。おかげで昨夜は遅くまでグループメンバーでPCを囲み、ああでもないこうでもないと議論していました。

右の写真は、一昨日、インドから来たShvetaという女性教授がファイナンスのケースをファシリテートしているところ。彼女はケースメソッドをやるのはこれが初めてだったそうですが、最後にクラスの議論が爆発してややコントロールが利かなくなってしまっていたものの、熱い議論にクラスを誘導できていて素晴らしかったです。

一方、昨日はオランダからの女性教授が管理会計のケースをやりましたが、淡々とファシリテートして70分を終わらせてしまい、最後にサイモンのマネジメント・レバーズのフレームワークがラップアップのところで出てきたのですが、結局このテーマをケースメソッドをやる必要があったのか疑問に感じるセッションでした。

クラス内で議論していることはそんなに的外れでもないと思うのに、どうしてつまらないのだろうとずっと考えていたのですが、セッションの後のサントマ教授のフィードバックを聞いて、そうだったのかと膝ポンでした。実は、これら受講者のケースセッションに対して、サントマ教授が終わったあとに印象的なフィードバック(メンタリング)を全員の前でやってくれるのが、とても勉強になっています。

インドの女性に対しては、次のようなフィードバックがされていました。

「クラスのディスカッションというのは、最初にエネルギーレベルの低い時間帯があり、次にエネルギーレベルの高い時間帯が来る。エネルギーレベルの低い時間は講師と学生の間でのやり取りが中心、エネルギーレベルの高い時間は学生同士が議論しあうようになる。ケースメソッドの『学習』は、このエネルギーレベルの高い時間に最も高まる。したがって、エネルギーレベルの低い時間をいかに短く済ませ、エネルギーレベルの高いディスカッションにクラスを引き込むかが、ケースメソッドクラスのポイントである」

味わい深いフィードバックですね。ただ、エネルギーレベルの高い時間は講師がディスカッションをコントロールできなくなるというリスクもあります(インドの女性教授は実際そうなりかけていた)。この部分でどうコントロールを利かせ、最後のまとめにうまく持って行くかというところのテクニックを、もう少し聞けると良かったのですが、そこまでは言及はありませんでした。

で、問題はオランダの女性教授のセッションに対するフィードバックです。セッションがいまいち盛り上がりに欠けた理由を、見事に指摘していました。

「このクラスは、コンテンツが非常に豊富だったため、時間内に収めるのが難しかっただろうと思う。その意味ではよくやっていた。ただし、2つもう少し改善できれば良かったと思う部分がある。1つは、黒板の板書があまりにも淡々ときれいに書かれすぎて、何が最も重要な部分なのか、それぞれのトピックがどのように繋がっているのか、最後まで分からなかったこと。重要なところはチョークの色を変えたり○で囲んだり、もっと勢いのある板書をすると良い。もう1つは、議論の中でほとんどケースの登場人物に対する言及や分析がなかったことだ。ケースメソッドは問題解決のためのメソッドではない。人間についてのメソッドである。我々はここで、ナマの人間にフォーカスし、人間について議論するべきだ」

「ケースメソッドは人間についてのメソッドである」という言葉は、衝撃的でした。振り返れば、印象的なケースさばきをやっている講師というのはグロービスでも「人間にフォーカス」している講師だと思います。言葉にして言われてみると、改めて納得です。

この受講者によるケースセッションは、来週ももう1コマ行われます。2人女性が続きましたが、来週は国際ビジネスを専門にするデンマークの男性教授のセッションです。彼とはケーススタディーのグループが同じなのですが、なかなかセンスの良さそうな人なので、今から楽しみです(←完全傍観モード)。

そう言えば、「リーダーシップ」のクラスを担当しているセバスチャン・レイヒという(僕が最初にメンタリングの見学をした)若い教授の講義が、ずっとつまらなくて死にそうでした(半分以上の参加者が、すでに彼の講義のケースを読むのを放棄している。みんな超やる気ないです)。それでも、3〜4人は発言する人がいて、何とかクラスが回ってしまうところが驚きですが。グロービスでこんなクラスやったら、事務局にクレームが殺到してしまうだろうと思うようなクラスです。

このクラスも議論していることはそれなりの筋があるのに、どうしてこんなにつまらないのだろうと思っていたのですが、おそらく彼の講義にも「人間」が出てこなかった(リーダーシップの話なのに、ひたすら組織と登場人物を淡々と分析していて、「皆さんがこういう状況だったら、どうする?」とか、「こういう人、どこの会社にもよくいるじゃない?」とか、そういう臨場感、生々しさがまったくなかった)のが原因かなと感じました。

というわけで、今日はあまり時間がないのでこんなところで。