「レゴブロック」で学ぶオペレーション・マネジメント


IFDPでは、IESEが提供しているMBAプログラムの中からいくつかの特色あるコースを抜き出して、そのデモンストレーション(と、場合によってはそのコースの背後にあるティーチングのコンセプトや意図など)をしてもらえます。その1つが、オペレーション・マネジメントに関するコースでした。

最初、IFDPのカリキュラムの中に「オペレーション・マネジメント」というコースがあるのを見たときに、「このコースは何を教えるのだろう…もしかして、ビジネススクール経営のオペレーション面について教えてくれるのかな」とか考えたのですが(笑)、それは大間違いでした。「オペレーションという無味乾燥でつまらないものを、ケースメソッドでどのように面白く教えるか」という、壮大なテーマに正面から向き合うコースだったのです。
「オペレーション」という言葉から多くのビジネスパーソンが連想するものは、おそらく華々しいイメージのある「戦略」とは正反対の、毎日の地味な努力やこつこつとした積み重ね、そして行列や確率といった面倒な数学を駆使するイメージでしょう。実際オペレーション・マネジメントというのはそういうものであり、こうしたことがオペレーションを「事業の競争戦略や会社全体の戦略を考える経営者のかかわる話ではない」と捉えられてしまう原因になっているのだろうと感じます。

ところが、IESEではMBAプログラムの1年次からオペレーションに関する必修コースを2つも導入しており、オペレーションに対して非常に力を入れています。ゼネラルマネジメントにオペレーションの理解は必須だと彼らが考えているからなのでしょうが、ものづくりが大好きな日本人でもない限り(笑)、ファイナンスのようにそれを知っているからと言ってゴールドマン・サックスに入れるわけでもないのに、フローチャートと数字が乱舞するオペレーションのコースは、避けて通りたいと思っているMBA生が多い気がします。

そんな中で何とか学生にオペレーションを面白く感じてもらおうと、あの手この手の工夫を重ねてきているのがIESEのオペレーションのコースのようです。昨日はランチのあと、3時間以上かけて「レゴブロック」を使ってオペレーションを学ぶというセッションがありました。レゴを組み立てては壊すという一連の作業を工場での生産プロセスに見立て、学生は2チームに分かれてそれぞれのチームの生産プロセスを観察し、どうやればより生産性を向上できるか議論し改善させるというものです。

3〜5分程度の生産を、改善を加えながら4回繰り返すのですが、参加しているメンバーの1人たりとも学ばないことのないように、時間配分やところどころでの教授の示唆の出し方などが非常に工夫されていて、ただただ感心するばかりでした。

日本のビジネススクールで「オペレーション」というと、上記のように数字が乱舞するため「理系の科目」「生産現場の人間が学ぶ科目」といった印象を持たれてしまい、文系の学生には特に避けられる傾向が強いのかなと思います。でも、こうして業務フローが目の前で動いている様子を見せ、それをどうコントロールするかを考えさせるといったシミュレーション的な要素を取り入れることで、生産現場や理系の経験がない学生にとっても議論に参加しやすくなります。IESEの「レゴブロック」の授業は、こうした狙いも持っているのだろうなと感じました。