IESEアルムナイへのお誘い

Alumni_iese水曜日は通常の最終日ということで、アルムナイのオリエンテーションもありました。これはとにかくGMSのアルムナイ活動の参考になる情報をもらわなければと(笑)、自分のアルムナイの話をそっちのけで必死にメモを取りましたので、ご報告したいと思います。

実は、IESEはアルムナイ活動はあまり評価が高くないです。The EconomistによるMBAスクールの世界ランキングの各項目評価を見ると、IESEはキャリアサービス(卒業後どのくらいの割合で就職できたか、年俸は上がったか等)の評価はとても高いのですが、アルムナイネットワークの評価はそれほど高くないです。このため、彼らもアルムナイの強化には結構力を入れているようです。どんな仕組みになっているのか、少しご紹介しようと思います。

IESEのアルムナイの活動のミッションは、アルムナイのサイトにも書いてありますが「卒業生に対して、卒業後も継続的な学びの機会を提供すること」と、「学びの機会の提供を通し、卒業生同士や卒業生とIESEが協力しあえるようにすること」です。

この、「継続的な学びの機会の提供」というところが、IESEのアルムナイのまず1つめの大きなポイントだと思います。つまり、MBAを「1回限りのサービス」ではなく、「生涯かけて学ぶサービス」という位置づけに変えることで、卒業後の学生からも収益を得る機会を生み出しているのですね。

またHBSの場合、『ハーバードからの贈り物』などを読むと、「卒業してから10年は同窓会に出るな」という格言があるほど同期生は互いを「ライバル」視するようなのですが(このへんは伝聞の範囲なので間違っていたらすみません)、IESEの場合は同期生を「卒業しても学び続ける仲間」と位置づけることによって、アルムナイのミーティングへの参加のハードルを下げているように思えました。

【アルムナイでのサービスが教授の大きな役割の1つ】

IESEのアルムナイの機能は、大きく分けて3つあります。「情報提供サービス」「セミナー・カンファレンス」、そして「コミュニティ」です。

情報提供サービスは、オンラインによるものがほとんどで、何種類かあります。1つはe-confarenceという、あちこちでやったアルムナイ・カンファレンスの代表的なものをインターネット上の動画で見られるようにしたものです。それ以外は、3ヶ月ごとのeメールによるアルムナイ・マガジン、あとアルムナイの名簿データベース、Factivaなど外部の情報データベース、ライブラリサービスの提供などです。

アルムナイの名簿サービスは(もちろんアルムナイ同士だけですが)、たぶんMBAホルダーの人にとってはとても有意義なネットワークツールなのでしょう。最初のプロフィール提出の際に「どこまで公開しますか?(1)すべて(2)個人プロフィルのみ(3)会社プロフィルのみ(4)個人の名前と会社名のみ(連絡先非公開)(5)一切公開しない」の5つから選ばせるようになっていて、まだアルムナイウェブに入って見てないから分からないけど、たぶん個人情報筒抜けモードです。あと、@iese.netドメインのメールアドレスもアルムナイサービスに入っています。

次のセミナー・カンファレンスですが、ここは最近IESEが最も力を入れているところです。

まず、各国のアルムナイ・ミーティングに合わせた「出前セッション」。昨年1年間でIESEの教授延べ90人が、22カ国に出かけていき、186回のセッションを行い、1万8263人が参加したとのこと。「今年はこれを2倍にします」と、アルムナイの事務局の人が公言しておりました。

そう、IESEの教授の大きな役割の1つが、この「各国のアルムナイ・ミーティングに出かけていって、そこで最新のビジネス情報を卒業生たちに提供する」というものなんですね。しょっちゅう引っ張り出されている教授とそうでない人と、かなり差はあるようですが、いずれにせよここがIESEの教授にとっての重要な仕事であることは間違いありません。

こうした情報提供セッションをもっと大がかりにしたものが、「ショート・フォーカス・プログラム」と呼ばれる、3〜5日の日程で世界中で行われているミニコースです。今年の後半から来年前半にかけて開かれる予定のショート・フォーカス・プログラムをざっと並べてみると、次のような感じです。

  • インサイド・ニューヨーク(2008年9月22日〜25日):ニューヨークで超豪華ゲストを集めてお送りするIESE渾身のエグゼクティブセミナー。そのゲストとは、トニー・ブレアジャック・ウェルチマイケル・ポータームハマド・ユヌス!凄すぎ。
  • インサイド・アフリカ(2008年10月27日〜31日):アフリカへの進出または投資を考えている方向けに、アフリカ経済の将来について。
  • 正しいグローバル戦略のあり方(2008年10月28日〜31日):グローバル展開する企業にとって、正しい戦略を考えるためのツールを提供。
  • インサイド・インド(2009年3月9日〜13日):インドでビジネスを考えている方に対して市場機会の捉え方の解説。
  • ルールに基づく活動(2008年9月30日〜10月3日):近年ますます強まる政府規制に対して、ビジネスモデルをどのように構築するべきかのアイデアを提供するセッション。
  • インサイド・チャイナ(2009年4月20〜24日):上海CEIBSとのジョイントプログラム。中国でのビジネス展開について考えるセミナー。
  • クリエイティブな組織文化とイノベーション(2008年11月18〜21日):企業内でイノベーションを起こし、クリエイティビティを活性化したいリーダーのための処方箋。

…などなど、挙げていくときりがないほどたくさんあるのですが、こういうのを1セミナー3〜4人ぐらいの教授で提供していく有料セミナーが英語・スペイン語の両方で多数開催されています。

このほか「コミュニティー」というさまざまなレベルの同窓会(Reunion)が年中どこかで開かれています。最も大きなのは、年1回秋に開かれるIESEのインターナショナル・コミュニティー(同窓会)。これ以外にもクラス単位の同窓会、地域ごとのアルムナイ・ミーティングなどさまざまな同窓会があり、それらに呼ばれれば教授が出かけていって講演するという仕組みです。

あと、今年から卒業生向けのキャリアに関するアドバイスサービスも始めたとのことでした。内容はよく聞いていませんが、たぶん現役生へのキャリアサービスを拡張したようなイメージでしょうか。まあ、IFDPのメンバーにはあまり関係がなさそうな話でしたが(笑)。

【会費は払って当然!という演出】

いろいろと説明があったのですが、最後にアルムナイメンバーシップに対する会費を見て、びっくり。スペイン国内在住者は411ユーロ(約7万円)/年、海外在住者でも164ユーロ(2万7000円)/年もするのです。

あまりに高額でびっくりしたので、あとでIFDPのディレクターのイサベラに「この会費って、もし払わないとどうなるのかな?」とおそるおそる聞いてみたところ、「え?!払わないの?さっきアルムナイ事務局の人が説明したと思うけど、メールとかいろいろなカンファレンスとか、ああいうアルムナイ向けサービスが全部受けられなくなって、単にアルムナイに名前が入ってるだけになるのよ!」とか、信じられないといった表情で呆れられてしまいました。

そんなにとんでもないことを言ったかしら…としょんぼりしつつ、あとで夕食に一緒に出かけた他の参加者に「会費結構高いけど払う?」と聞いてみたところ、アフリカやロシアといった途上国組は「ノー。自分では到底払えないし、うちの大学も関心を持つとは思えない」、オランダやカナダといった先進国のメンバーも「あまりメリット感じないし、たぶん払わないと思うよ」とつれない答え。そっか、みんな冷めてたのねーと、ちょっとホッとしました。ちなみに僕の分は払おうかどうしようか、まだ考え中です。冷静に考えるとあまりメリットもなさそうなのですが、そうは言っても機関誌やセミナー情報など、今後のグロービスのためにいろいろ参考になる情報も仕入れられる貴重な機会だと思うし…。会社からアルムナイ会費とか、出してもらえませんかね?(笑)>陶久さん

でも、MBAコースの卒業生は、こんなカネすぐに払えるぜ!みたいな仕事に就くから、余裕で払えるんでしょうねーなどと思って、本当はどのくらいの入会率なのか調べてみようと思い立ち、IESEのアルムナイの昨年度の決算報告を見てみました。

すると、なんと!アルムナイ会費収入が330万ユーロ(5.5億円)にも達しています。会費を払っている卒業生が全員スペイン在住だったとしても、これまで累計3万人以上のアルムナイのうち、4分の1以上の8700人が払っている計算。もちろん海外にいる人も多いでしょうから、そうするとアルムナイの半分近くは会費を払っているということになります。こんなに高い会費なのに、皆さんよく払うよなあ。ものすごいロイヤリティですね。そしてもちろん、各国のアルムナイ活動に対する支援や事務局の人件費等を引いても、何と100万ユーロもの黒字が出ているのでした。

というわけで、グロービスもアルムナイ活動を卒業生に対する付帯サービスと考えるのではなく、それ単体で「黒字になる」ことを目指していかないといけないといけないなあと思った次第です。