映像を使ったケース・セッション

今日は映像を使ったクラスについて、少しご紹介したいと思います。IFDPの中でも、映像を使ったプレゼンテーションはかなり頻繁に多用されていました。クラス内で上映される映像は、教授が説明してくれた範囲でケースとともに作られたと分かるもの、またはHBSなどから購入したというものなどがありましたが、中には「これどこから持ってきたの?」と思うものもありました(要するに企業CMをそのまま上映するものが多かった)。YouTubeなどの動画サイトから引っ張ってきたわけでもなさそうなので、いったいどうやって許可を取ったのだろう?と思うものが多かったです(日本の場合、ビジネススクールにおけるCMの上映は著作権上の問題で申請してもほとんど許可が下りません)。

ケースとともに作られた映像はもちろんyoutubeなどで探しても見つからないのですが、映像の上映許可を取っていなさそうなCMについては、youtubeで探したら見つかりました。以下、ちょっと引用してみます。


LEBRON JAMES in CHAMBER OF FEAR
これは、ナイキが中国で2006年に放映して1週間で放送禁止になったCM。リーダーシップのコースの中の、「異文化コミュニケーションとリーダーシップ」の回で紹介されていました。講師は「とても面白いCMだが、中国で放送すべきではなかった。克服すべき対象のモチーフが中国文化を引用しすぎている」とコメント。正直、授業の内容とのつながりがあまり良くないなと思っていたのですが、CMが面白かったので、何となく楽しいクラスだったような気がしました(笑)。

正直、こういうCMの上映って講義中にどこまでやっていいものなんでしょうかね。ある教授は、「どんなに長くても2分以上映像を上映することはしない。講義の内容よりもそちらに気を取られてしまうから」と話していました。ただし、あまり知られていないケースのお店の雰囲気を見せたり、団体の紹介を映像で行う(例:「ベニハナ・オブ・トウキョウ」のケースでHBSがベニハナに許諾を取って売っているCM映像や、ソーシャル・アントレプレナーシップの「Institute for OneWorld Health」のケースでの、IOWHの事業紹介の映像。後者はyoutubeにもありました)とかはよくやっているそうです。

ただ、どれもあくまでケース前のイントロダクション、興味喚起の役割がメインで、後半の議論のラップアップなどに映像を使うという例は、なかったように思います。唯一の例外が上のリーダーシップのクラスのナイキのCMでしたが、これも正直言って意図がよく分かりませんでした。映像は言語以上にストレートに脳の中にあるイメージを生成するので、議論の中から自分にとってのさまざまな意味合いをつかみ出させ、考えさせることを目的とするケースメソッドとは、もともとあまり相性が良くないのかもしれません。

次は、メルセデス・ベンツの、これも2006年のコマーシャル。youtubeでは「Funny commercial」というタイトルが付けられているほど、面白くてインパクトが強いです。


Funny commercial: beauty is nothing without brains

このCM、上映した瞬間はクラス中大爆笑でした。実は僕自身も面白すぎて、どのコースの講義で上映されたかすらよく覚えていない(笑)。面白すぎる映像教材の問題点は、その講義の内容を完全に忘れさせるほど「面白い」ことです。面白いCMを講義の時にやたら使ってはいけない、という実体験を伴う典型的事例でした。